ガーディアン・アドバイザーズの事業推進チームに新たに加わった新入社員・大井。 M&Aについては、まだ学び始めたばかりです。
この連載では、そんな大井がM&A初心者代表として、CEOの佐藤に率直な疑問を一つずつ投げかけていきます。 1999年から一貫してM&Aに携わってきた佐藤の言葉を通じて、現場の視点でM&Aの基本をわかりやすく紐解いていきます。
前回は、デューデリジェンス(DD)について解説しました。今回はその進め方に焦点を当てます。
大井
前回、DDにはデータルームの準備やQ&A対応など4つの主要な対応があるとお聞きしました。これらは具体的にどのように進められていくのでしょうか。
佐藤
まず資料の開示ですが、現在はバーチャルデータルーム(VDR)というクラウド上の専用システムを使うのが主流です。20年ほど前までは、文字通り「物理的な部屋」に資料を用意して、買い手がそこへ出向いて調査をしていました。
大井
今のデジタル化された環境からすると、想像もつかない光景ですね。
佐藤
以前は段ボール何十箱分という紙資料が送られてくることもありました。ドラマ『ハゲタカ』でも描かれていましたが、当時は「大量のコピーで紙詰まりが起きて調査の時間が止まらないよう、コピー機を2台用意してほしい」と買い手から要望される時代もあったほどです。
今はすべてPDFやエクセルをクラウドにアップする形に変わりましたが、渡しやすくなった分、昔よりも求められる資料の量自体は増え、より細かい分析が行われるようになっています 。
大井
デジタル化で作業負担は減ったものの、扱うデータ量は増えているのですね。膨大な資料に対するQ&Aリストはどのように運用されるのでしょうか。
佐藤
今はVDR内のQ&A機能を使うのが一般的です。買い手側から出される質問は、200問から300問にも及びます。しかも、1行の中にさらに細かい小問が5つも並んでいるようなこともあり、対象会社にとっては非常に大変な作業です。これを1〜2ヶ月という限られた時間内で、普段の仕事をこなしながら対応しなければなりません。
大井
それは相当な負担ですね。そこでFAが間に入るのですか?
佐藤
はい。FAはDDの調整や段取りを組むほか、Q&Aを集約するハブの役割を務めます。売り手側のFAは、対象会社の負担を軽くするため、Q&Aの上限数を設け、買い手側のFAは、限られたQ&A数に収まるように関係者間の調整を行ったり、場合によっては上限数の引き上げを求めます。
大井
マネジメントプレゼンテーションやサイトビジットはどう進みますか。
佐藤
マネジメントプレゼンテーションは、対象会社の経営陣が会社の戦略などを直接プレゼンしたりインタビューを受けたりする場です。サイトビジットは実地調査のことで、実際に工場見学をしたり、主要な店舗を見に行ったりします。コロナ禍で移動が制限された時期でも、VDRやZoomといったテクノロジーのおかげでDDは普通に進められており、現地を見たほうが良いのですが、映像でも理解が深まるという発見もありました。
大井
デジタル化によって効率化しつつも、最後は現場での対話や実態の把握が重要になるということですね。
佐藤
そうです。テクノロジーの進化に伴い、時間と場所の制約から解放されていくことでDDの生産性は高まってきましたが、リアルな確認は引き続き重要です。