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#08 M&Aはどう進むのか 〜クロージングから逆算すると見える全体像〜

ガーディアン・アドバイザーズの事業推進チームに新たに加わった新入社員・大井。 M&Aについては、まだ学び始めたばかりです。

この連載では、そんな大井がM&A初心者代表として、CEOの佐藤に率直な疑問を一つずつ投げかけていきます。 1999年から一貫してM&Aに携わってきた佐藤の言葉を通じて、現場の視点でM&Aの基本をわかりやすく紐解いていきます。 

前回は、会社を売る理由に焦点を当て、買い手とは異なる視点からその背景を学びました。今回は、実際にM&Aはどのように進むのか、プロセスの全体像をひも解きます。

大井
これまでのお話で、M&Aが“なぜ起きるのか”についてはよく理解できました。実際に会社を売買しようとする場合、どのような流れで進むのですか?

佐藤
ここでは、株式を取得することで会社を買収するケースを想定しよう。
本質はとてもシンプルで、最終的に行うことはただ一つ。株式を“売買”すること。

大井
単純ですね。

佐藤
そう。例えばコンビニでジュースを買う時は、レジに持っていって「はいどうぞ」で終わる。あれも法的には“契約”。本来、契約書なんてなくても、「買いたい」「いいですよ」で契約は成立する。
株式も同じで、極端に言えば「この株をいくらで売ります」「はい、買います」だけで成立する。

大井
でも実際には、さまざまなプロセスがありますよね?

佐藤
そのとおり。実務では、安心して契約に進めるように、いくつかの手続きを段階的に積み重ねていく。そして、M&Aの最終地点がクロージング。これは、株式が買い手に移り、代金が売り手に支払われる瞬間のこと。

大井
ここで会社のオーナーが変わるのですね。

佐藤
そう。ここがゴール。そしてその直前には必ず SPA(株式譲渡契約書) を締結することになる。さらにその前段階にあるのがDD(デューデリジェンス)。もし大井さんが誰かに「この会社を100億円で買って」と言われたら、何も調べずにそのまま買うことはしないはず。

大井
絶対に調べてから決めます!

佐藤
それがまさにDD。会社の実態を徹底的に調べるプロセスで、財務・税務・法務・ビジネス・許認可・訴訟リスク・人事・環境・ITまで本当に幅広い。売り手はこの段階では隠し事ができないし、買い手も本気でないと情報を見せてもらえない。誰にでも会社の内部情報を見せたいわけではないからね。だからDDの前に、買い手は意向表明書(LOI)を出して、買収に対する本気度を示す。

大井
どんなことを書くのですか?

佐藤
買いたい理由、想定している価格帯、買収までのスケジュール、買収後の方針――こうした内容を大まかでも示すことで「本気で検討してくれる」と売り手が判断できるようになる。意向表明を行うためには、その根拠となる情報が必要。そこで売り手が渡すのが IM(インフォメーション・メモランダム)。いわば会社の“自己紹介書”。そして、その前に必ず締結しなければならないのが NDA(秘密保持契約)。

大井
M&Aが動いていること自体、外に漏らしてはいけませんしね。

佐藤
そう。売り手にとっては大きなリスクになる。

流れを整理すると、まずNDA(秘密保持契約)を締結し、続いてIM(インフォメーション・メモランダム)が開示される。その内容を踏まえて買い手が意向表明(LOI)を提出し、本格的なDD(デューデリジェンス)に進む。その後SPA(株式譲渡契約書)を締結し、最終的にクロージング――株式と代金の受け渡しが行われる、という順序になる。

大井
「株を買う」というシンプルな行為を、どうすれば安心して実現できるのか。そのために、これだけのステップが必要になるわけですね。

 



次回は、今回触れた各プロセスをより具体的に見ていきます。

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