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ガーディアン・アドバイザーズの事業推進チームに新たに加わった新入社員・大井。 M&Aについては、まだ学び始めたばかりです。
この連載では、そんな大井がM&A初心者代表として、CEOの佐藤に率直な疑問を一つずつ投げかけていきます。 1999年から一貫してM&Aに携わってきた佐藤の言葉を通じて、現場の視点でM&Aの基本をわかりやすく紐解いていきます。
前回は、M&Aの関係者それぞれの役割を整理しました。今回はデューデリジェンス(DD)について解説します。
大井 M&Aのプロセスのデューデリジェンス(DD)では、具体的に、買収される対象の会社はどんな対応をするのでしょうか? 佐藤 はい、DDは「詳細調査」や「買収監査」とも呼ばれる、M&Aにおいて買収先を徹底的に調べる非常に重要なプロセスです。買い手側は、弁護士や会計士といった専門家を交えて、主に会社の法務、会計・税務、そしてビジネスの3つの側面からチェックを進めます。 大井 その3つの側面では、具体的に何を調べるのですか? 佐藤 まず法務では、法令遵守がなされているか、契約書の要件が整っているか、そして将来の訴訟リスクにつながるような「偶発債務」がないかといった点を洗い出します。次に会計・税務では、会計帳簿が正しく作られているかを確認のうえで「正常収益力」や「実態純資産」を把握したり、将来の追徴課税のおそれもチェックします。最後にビジネスでは、市場環境やビジネスモデルを分析し、将来の業績予想まで行います。 大井 この徹底的な調査はどのような手順で進められますか? 佐藤 主な対応としては4つあります。1つ目は、財務諸表や重要な契約書類など、普段は開示しない資料をデータルームという形で買い手側に公開し、閲覧してもらいます。2つ目は、資料だけでは分からない疑問点をまとめたQ&Aリストをやり取りし、対象会社が回答するというやり取りです。質問は数百問に及ぶこともあります。 大井 他にどんな対応があるのでしょうか? 佐藤 3つ目は、経営陣による事業戦略などのマネジメントプレゼンテーションや特定の分野で専門家と担当者が直接対話するインタビューセッションです。4つ目として、工場や店舗といった現場を実際に確認する実地調査(サイトビジット)も行います。 大井 調査期間はどれくらいかかるものなのでしょうか? 佐藤 期間は通常1ヶ月から長いと2ヶ月を超えることもあります。 大井 それだけ短期間で、日常業務と並行して行うのは対象会社にとって大きな負担になりますね。 佐藤 その通りです。しかも、社内に情報が広がるのを抑えながら、短期間で大量の資料を集め、専門家からの質問に正確に対応していくのはただでさえとても大変なことですが、これらを日常業務に加えて行う必要があります。しかし、この調査を売り手側と買い手側が協力して乗り越えることで、買い手はリスクを把握して適切な価格を提示できるようになり、M&Aが最終的な契約へと進む土台が築かれるのです。
#10 デューデリジェンス(DD)って何をするの?〜DDで調べる3つの側面〜
#09 M&Aの登場人物たち―取引を動かす人と役割
#08 M&Aはどう進むのか 〜クロージングから逆算すると見える全体像〜
#07 売却はなぜ起こる? 〜「より高く評価する相手に託す」という選択肢〜
#06 独占と競争のはざまで 〜カルテル・トラスト・コンツェルン〜
#05 M&Aの歴史(後編)〜日本におけるM&A〜