IT前提経営®️ブログ

2021.02.17

データ量とネットインフラの追いかけっこー5G時代に考えるべきことー

インフラ整備とデータ量の追いかけっこがクリティカルになってきています。

 例えば今は「5G」の話題が花盛りです。

5Gになると何が変わるのか?という問いへの教科書的な説明は、

(1)多接続

(2)低遅延

(3)高帯域(ブロードバンド)、への対応です。

つまりこの3点において4Gより勝るということです。例えばラッシュ時の駅などに行くと、スマホのアンテナマークはしっかり立っているがネットが繋がらないという経験をしている方も多いと思います。もちろんその理由は複合的なのですが(1)と(3)の問題に主に起因します。では、5Gのアンテナが張り巡らせられればこの問題は解決するのでしょうか。

スマホの台数は既に上限(つまり人口辺り1人2台程度)だから解決する方向だという意見もありますが、IoT(Internet Of Things:モノのインターネット)時代に突入し、そこかしこにある自動販売機や監視カメラなどにもアンテナが取り付けられ、ネットに繋がっていたりと、まさに、全てのメカ(モノ)が簡単に安くモバイルインターネットに接続できるうになりました。もちろんCASE文脈におけるクルマもIoTのTの一つです。5Gになってどれだけ「多接続」になったところで、いつかはその限界に達するのです。

もうちょっと分かり易い話をすると、東京や都市部の集合住宅に住む方々は夕方のネットのスピードにストレスを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は長野県の田舎と東京とを行き来する多拠点生活者ですが、夕方の東京は「下り1GMbps」を宣伝する比較的値段の高いインターネットサービスプロバイダーの光回線でも2桁Mbpsまでスピードが落ちてしまい、場合によってはZOOM会議すら不安定になってしまいます。特にコロナ禍でのテレワークの影響も大きいでしょう。

 

さて、今から20年前に誰が、これだけ沢山の人が、日常的にYoutubeやNetflixを見たり、朝から晩までネット会議をすると想像していたでしょうか。

大昔はテキストだけの時代でした。BBS(Bulletin Board System:電子掲示板システム)があり、皆、テキストや絵文字でコミュニケーションをとっていました。ウェブの登場で、そこに画像や動画が加わり、今では、テキストと同様、あるいはそれ以上に、動画ーーそれを因数分解すると、音声と動画ですがーーが増えてきています。つまり、インターネットのインフラの上に乗るデータ量が格段に増えているのです。加えてNHKも総合とEテレのほぼ全てのコンテンツ(番組)を高画質でインターネット側にサイマル放送(NHK Plus)をし始めましたし民放もTVerなどのチャレンジをしています。これは国際的な潮流です。私たちはそれによってだいぶ便利になってきているのですが、一方で大変なのは、インフラ屋側です。動画が4Kになり、近い将来には8Kになりと、どんどんデータ量が増えていけば、それに応じた投資をしなくてはなりません。

このデータ量とインフラ投資のループのスピードが遅い時代はよかったのですが、ここ10年はそれが極端に早いのです。それが5Gのようなモバイル通信であったとしても、光ファイバーに代表されるランドラインであったとしても、単にデータ量とのせめぎ合いですから、回線速度をコミットしないベストエフォートの回線(契約)である限り、タイミングによっては、「遅くてストレス」または「つながらない」という事象から完全に開放されることは、まずないのではないかと思います。

この辺の詳しいことは『インターネットは誰のものか〜崩れ始めたネット世界の秩序〜』に書かれていますので、ご興味のある方は読んでみてください。

 

私どもの提供するIT前提経営®アドバイザリー(TDMA:Tech Driven Management Advisory)の仕事をしていると、5Gによって薔薇色の世界が到来し、ビジネスの効率化も薔薇色になるという期待を経営者の方々からよく聞くのですが、少なくとも、そうはならないということを説明させて頂くことが多いです。

ギャランティー型の専用線を確保しない限りは、今後もインフラ敷設の投資とデータ量のかなりシビアなせめぎ合いの中で「遅い」「繋がらない」というストレスを抱えながら、この問題とうまく付き合っていくしかない、というのが現実なのです。

ぜひご自身のスマホのデータをご確認してみてください。私はiPhoneですが、写真と動画をそこそこ撮るのと、音楽も沢山入っているため、もはや小さなスマホの256GBのSSD(Solid State Drive:HDDに似た記憶装置。現在はPCやスマホなど多くのデバイスがHDDの代わりとしてこの記憶装置を利用している)は目一杯です。一方で、Appleはユーザーが意識しないうちに、どんどんクラウド化を進めています。音楽データはクラウド側で保持して都度ダウンロードしながら聞くという運用になりはじめているので(実はネットに全く繋がらないところだと聞けない場合もあるのですが)、ローカル(つまりスマホ側)のデータはミニマイズできます。同様に設定次第では、写真や動画もスマホにはミニマムでオリジナルはクラウドへとなってきています。もちろん、クラウド側が膨大になれば、そこにお金を支払わないといけませんが(私は2TBの契約で月々1,400円ほどをAppleに支払っています)、その代わりとして、バックアップの心配や写真や動画の節約からは一旦開放されます。一方で、手持ちのスマホの記憶容量を小さく抑えるということは、同時に、写真、動画、音楽のファイルを都度都度クラウド側に見に行くということと同義ですから、当然そこで、パケットを消費する=インフラに負荷をかけることになります。これを全世界の何十億人もの人がやることを考えると、その負荷は想像を絶します。個人だけではなく、エンタープライズ側にも同様の議論があり、例えば、CRMクラウドのSalesforce.comと基幹システムのSAPクラウドがAPI連携をするというごく一般的な構成を考えた場合、日々の大量のトランザクションがインターネット経由でやりとりされることになり、インターネットのインフラに負荷をかけることになります。(インフラ側のビジネスでインターネットを介さず大型クラウド同士を専用線接続するサービスもではじめてはいます)。

 

昔話になりますが、私が大学院生の頃のインターネットの接続スピードは64Kbpsから128Kbpsにやっとなった時代でした。いわゆるNTTのISDNです。今のランドラインのインターネット回線のスピードを仮に500Mbpsとした場合、実に5000分の1くらいでしょうか。さらに数年前の学部生の時代はファックスモデムから9600bpsや14400bpsといった更に単位が下方向に違うスピードで大学のコンピューターを介してインターネットに出て行った時代ですから、今からでは想像もつきません。その時代にネットに定額で繋ぎ放題となる時間は23時から翌早朝までだったことを思い出します。したがってユーザーは事実上、夜中しかネットができない、という時代だったのです。もちろんその時代から比べると夢の様な環境になった訳ですが、ただ結局のところ、その時と事情は変わっておらず、大容量データ時代に快適なインターネット環境を一般ユーザーとして確保しようとした場合、時間の折り合い、言い換えると、道路の譲り合い、をしなければ上手くいかないのです。

 

この議論からも分かる様に、技術に一定の理解が無いと、次のデジタルの一手が打てなかったり、間違った一手を打ってしまうのです。IT前提経営®の基本的な哲学は、まさにそこにあるのです。



(今回の与太話)

今回はインターネットの通信インフラの話をしたのですが、実はもっと身近なところでもこの問題は起きています。ホームビデオやアクションカメラ(もちろんスマホの動画撮影機能も)が大衆化して久しいですが、4K動画のような超高画質(高音質)が撮影できるガジェットが、普通の値段で普通に買えるようになりました。4KとHDの2つのカメラがあれば、せっかくだから高画質を、と4Kを選ぶのが消費者の心です。しかしこの4K動画の扱いが大変です。撮影した機材のSSDやSDカードに録画されるまでは良いのですが、それをPCに転送したり、PCの中で編集したりすると、転送速度やマシンパワーが追いついてきません。転送するのに1日かかってしまったり、編集しようとしても何度も編集アプリがダウンしてしまったり、その繰り返しを経験した人は少なくないのではないでしょうか。これも実は同じ問題で、人の欲望に従ってデータ量だけは無尽蔵に大きくなるのですが、その処理をしたり、伝送したりする側がまったく追いついていかない事例の一つです。

 

ガーディアン・アドバイザーズ株式会社 パートナー

立教大学大学院 特任准教授

高柳寛樹

 

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IT前提経営」が組織を変える デジタルネイティブと共に働く(近代科学社digital)2020

まったく新しい働き方の実践:「IT前提経営」による「地方創生」(ハーベスト社)2017

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