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ガーディアン・アドバイザーズの事業推進チームに新たに加わった新入社員・大井。社内で耳にする機会が増えたDXについて、まだ学び始めたばかりです。この連載では、大井がDX初心者代表として、当社取締役であり IT前提経営®の提唱者でもある高柳に率直な疑問を投げかけていきます。大学時代にTECHベンチャーを創業して以来25年以上、クラウドサービスやソフトウェア開発の最前線で活躍し、情報社会学者としての知見を活かして数多くの企業のDX推進・デジタル戦略を支援してきた高柳。そんな高柳の視点を通じて、IT 化との違いから企業変革のプロセスまで、DX の基本をわかりやすく紐解いていきます。前回はDXと「IT化」の違いと、DXを段階的に捉える3つのフェーズについて解説しました。今回はDXによって起こる変化に迫ります。
大井 前回、DXは単なるIT化ではなく「会社そのものが変わること」だと教えていただきました。今回は、DXが進むことで企業に具体的にどのような変化が起きるのか、ぜひ詳しく伺いたいです。 高柳 そうですね。DXで何が変わるのかを一言で言えば、ビジネスにおける収益の上げ方、いわば「価値創造の仕組み」そのものがアップデートされるイメージです。単なる効率化やコスト削減にとどまらない、もっと根本的な変化ですね。 大井 根本的な変化とは? 高柳 私はこれをよく「ソフトシフト」と呼んでいるのですが、この20〜30年で社会のあり方が一気にソフトウェア中心へと塗り替えられました。その結果、DXが進んだ企業は、収益が発生するタイミングであるキャッシュポイントがどんどん多層化していく傾向にあります。 大井 キャッシュポイントが増えるとは、具体的にどういうことでしょうか? 高柳 身近な例でいうと、Appleが分かりやすいですね。かつてのAppleは、Macなどの「ハードウェアを売り切って終わり」というビジネスモデルでした。パソコンは一度買ったら、普通は数年は買い替えませんよね。ところが今は、iCloudやApple Musicといったサービスが非常に充実しています。つまり、商品を売って完結するモデルから、「ずっと使い続けてもらう」ための仕組みへとシフトしたんです。たとえば、大切な写真がすべてiCloudにあれば、なかなか他社へは乗り換えられませんよね。 大井 確かに、売上の形が「その場限り」から「ずっと続くサブスク」へと変化していますね。 高柳 その通りです。実は、ここからが一番面白いところなんです。顧客と継続的に繋がり続けることで、企業は単にモノを売る以上の、「一生付き合っていく」という深い関係性を築けるようになります。DXが進むと、一人の顧客から得られる価値が、これまでとは比較にならないほど高まっていくのです。 大井 なるほど。単に仕事が速くなるだけでなく、収益の形もお客さんとの繋がり方も、丸ごと新しくなるということですね。 高柳 そうです。DXが進むと、こうやってビジネスチャンスが増え、一人の顧客から得られる価値が大きくなる。この構造の変化こそが、結果として企業価値を劇的に引き上げる原動力になっていきます。 大井 DXによって、ビジネスモデルと顧客との関係性が作り直されるのですね。
#02 DXで企業はどう変わる?〜「ソフトシフト」がもたらす構造変化〜
#01 DXとは何なのか〜IT化との違いから考える〜