誰のためのIT投資なのか。

企業のDXアドバイザーをしているとよくぶつかる課題に「導入したITが使われない」という類の経営からの悲鳴を聞く。
一方の現場からの声として聞かれるものは「またITが変わるのか」「使いにくい」「入力のメリットがわからない」というようなものだ。

これに対し、経営からの打ち手として、各部門長に対して当該IT利用やシステムへの情報入力に強制力を働かせたり、金銭的なインセンティブを出したり、といったことが行われていたが、残念ながらあまり効果はない。

経験的に、問題の根幹は当該IT利用のインセンティブではなく「理解」であると考えている。つまり、経営トップからそれを導入することの意味を、利用する全員が理解できるところまで丁寧に説明できていないのである。

私が経営してきた会社は、そもそもがインターネットやソフトウェアの会社だったり、それに関わるアドバイザリーの会社だったりするので、比較的説明をしなくても理解されることが多かったが、IT経験がベースにない事業会社であれば、そうはいかない。

では「IT導入の理解」とは何か。換言するとそのITを導入した場合「何が起こるか」だ。
DXの2つの大きな経済的効用は(1)トップラインの向上(2)利益率の改善、であるが、それは直接的には経営にとってのであり、必ずしも、現場の興味と一致しない。

つまり、そのITを導入することで「個人にとって何がおこるのか」と、「会社にとって(経営にとって)何がおこるか」を分けて整理して丁寧に説明しなくてはならない。

「そのITを使っても入力の手間が増えるだけだ」というクレームがあったとする。しかし、正しい「ITグランドデザイン」のあるIT導入ならば「一義的に皆さんの入力の手間は増えるかもしれないが、皆さんの暗黙知がシステムに入力されて形式知として共有されることで、会社としては最終的に営業利益が**%改善されることが見込まれる」というところまで説明できるとすれば、一義的な手間であってもビジネスマンならば入力に至る。

またRPAの導入などは直接的に現場の「手間」を削減するため、経営のインパクトまで説明せずとも、すぐに使ってもらえるケースが多い。

つまり「誰にとってのIT投資なのか」という点について「会社にとっては何が起こり」「個人にとっては何が起こるのか」の両面から丁寧に説明することが重要なのである。

この説明をするためにも、私たちの仕事の1つである「ITグランドデザインの構築」は非常に重要になるのである。



ガーディアン・アドバイザーズ株式会社 パートナー 兼 IT前提経営®アーキテクト

立教大学大学院 特任准教授

高柳寛樹

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高柳の著書はこちらよりご参照ください。

「IT 前提経営」が組織を変える デジタルネイティブと共に働く (近代科学社digital)2020

まったく新しい働き方の実践: 「IT 前提経営」による「地方創生」 (ハーベスト社)2017

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