大井
前回、DXは単なるIT化ではなく「会社そのものが変わること」だと教えていただきました。今回は、DXが進むことで企業に具体的にどのような変化が起きるのか、ぜひ詳しく伺いたいです。
高柳
そうですね。DXで何が変わるのかを一言で言えば、ビジネスにおける収益の上げ方、いわば「価値創造の仕組み」そのものがアップデートされるイメージです。単なる効率化やコスト削減にとどまらない、もっと根本的な変化ですね。
大井
根本的な変化とは?
高柳
私はこれをよく「ソフトシフト」と呼んでいるのですが、この20〜30年で社会のあり方が一気にソフトウェア中心へと塗り替えられました。その結果、DXが進んだ企業は、収益が発生するタイミングであるキャッシュポイントがどんどん多層化していく傾向にあります。
大井
キャッシュポイントが増えるとは、具体的にどういうことでしょうか?
高柳
身近な例でいうと、Appleが分かりやすいですね。かつてのAppleは、Macなどの「ハードウェアを売り切って終わり」というビジネスモデルでした。パソコンは一度買ったら、普通は数年は買い替えませんよね。
ところが今は、iCloudやApple Musicといったサービスが非常に充実しています。つまり、商品を売って完結するモデルから、「ずっと使い続けてもらう」ための仕組みへとシフトしたんです。たとえば、大切な写真がすべてiCloudにあれば、なかなか他社へは乗り換えられませんよね。
大井
確かに、売上の形が「その場限り」から「ずっと続くサブスク」へと変化していますね。
高柳
その通りです。実は、ここからが一番面白いところなんです。顧客と継続的に繋がり続けることで、企業は単にモノを売る以上の、「一生付き合っていく」という深い関係性を築けるようになります。DXが進むと、一人の顧客から得られる価値が、これまでとは比較にならないほど高まっていくのです。
大井
なるほど。単に仕事が速くなるだけでなく、収益の形もお客さんとの繋がり方も、丸ごと新しくなるということですね。
高柳
そうです。DXが進むと、こうやってビジネスチャンスが増え、一人の顧客から得られる価値が大きくなる。この構造の変化こそが、結果として企業価値を劇的に引き上げる原動力になっていきます。
大井
DXによって、ビジネスモデルと顧客との関係性が作り直されるのですね。