DX入門

#03 DXの「壁」〜組織と文化〜

大井
前回のお話で、DXの本質は業務効率化ではなく「稼ぎ方を変える」こと、そして「ソフトシフト」によってキャッシュポイントが増えるということが分かりました。 DXで稼ぎ方が変わるという話、Netflixの例も象徴的ですよね。

高柳
その通りです。NetflixはもともとDVDの郵送レンタル会社でしたが、今はサブスクリプションモデルの代表格です。しかし、彼らの真の強みは「月額課金」であること以上に、「全ユーザーの視聴データを握っていること」にあります。
誰がどこで視聴を止めたか、次に何を検索したか。こうした膨大なデータをもとに、次に制作するオリジナルコンテンツの内容まで決めています。ここで重要なのは、データが単なる「消費行動の記録」に留まらない点です。コンテンツの企画・制作段階から、市場の潜在的なニーズや、既存コンテンツのどの要素が視聴者を惹きつけたのかといった深い洞察がフィードバックされ、ヒットの確度を高めるための「制作戦略」として活用されます。
配信という「出口」だけでなく、制作という「入口」までがデータドリブン(データ駆動型)になっています。

大井
個人の経験則や勘ではなく、データに基づいて事業判断を下しているのですね。

高柳
そうです。長年のデジタル投資によって「データと判断の仕組み」を構築したからこそ、彼らは自分たちの事業ドメインを「レンタル業」から「エンターテインメント制作業」へと進化させることができた。DXとは、「自分たちは何の会社なのか」を再定義するプロセスでもあるんです。

大井
それほど劇的な変化なら、苦戦する企業が多いのも頷けます。DXにおいて何が壁になるのでしょうか。

高柳
本当の壁は、実は技術でどうすることもできません。組織と文化にあります。
多くの企業は業務効率化で満足して止まりますが、DXが本格化すると「情報が共有される前提」に切り替わります。

情報が透明化されると、これまで通っていた経験則や「声の大きい人」の判断が、通りにくくなる。
ここで、組織に摩擦が起き、揉めます。

大井
過去の成功体験が、変化を拒んでしまうのですね。

高柳
その通りです。情報を独占して権威を保ってきた層にとって、データによる意思決定は脅威に映ることもあります。だから鍵は、「データで決める」ことを個人の努力にせず、組織の型(会議、権限、評価、学習)を作り直せるかどうか。変化に合わせてアップデートするのか、今の形を維持するのか。それは各企業が自ら決めるべきことでしょう。